在宅での緩和ケア
がんのかたが病院で治療を終了したあと自宅に帰ってきた場合、わが家で過ごせる時間はほんのわずかな期間でしかありません。
この期間に如何に充実して家で過ごすかは本人、家族次第です。
幸せな時間がいつまでも長く続けばよいのですが、病状にもよりますが、2/3くらいのかたは2ヶ月以内に再入院するか、または家でお亡くなりになるという現実を受け入れてください。
一日、一日を大切にして、痛みや吐き気がなく、食事が十分に摂れる状態にコンディションを整えておくことが大事です。
在宅ホスピスケアについて
我が国におけるがん治療のシステムでは、患者様やご家族の立場からみるといくつか不備な点があります。
なかでも自宅で過ごすがん終末期患者のケア(在宅ホスピスケア)については、今まで医療の光がほとんど届いておりませんでした。
当クリニックの方針では、在宅ホスピスケアに診療の重点をおき、患者さんと家族が自宅で安心して過ごせるような訪問診療を目指しております。“がん”と聞くと、皆さん“痛い”というイメージが浮かぶと思いますが、そのへんをQ&A方式にまとめてみましたので、ご参照ください。
Q:痛みに対してモルヒネなどの麻薬を使用すると聞きましたが、危険な薬なのでは?
A:この30年間、ことに10年間にモルヒネなどの医療用麻薬(以下オピオイド)のイメージが大きく変わり、痛みに対して、安全で有効に使える薬になりました。今では疼痛治療の主役は、モルヒネなどのオピオイドで、WHO(世界保険機構)の指針や厚生労働省と日本医師会によって推奨されている治療法の一つとなりました。この薬は当院の癌治療、緩和ケアに精通した医師が患者さんに合った適量を処方しますので心配いりません。
Q:オピオイド※は患者さんの寿命に不利に働くのでしょうか?
A:オピオイドの使用により痛みが消失すると、痛みのため眠れなかった患者様が睡眠を確保できるようになり、食欲まで回復することがあります。よく眠れて、よく食べることは患者様の意識を前向きにし、命を縮めるというよりは、むしろQOL(生活の質)の向上を助けながら命を長くする効用があると解釈できます。
※オピオイド……疼痛に対して鎮痛作用がある物質
Q:患者の看病疲れ、葛藤など不安があるのですが?
A:緩和医療において患者様のみならず、家族のケアも重要な部分を占めております。特に、患者さんと言語的コミュニケーションがとりにくくなれば、家族のケアがむしろ中心となります。当クリニックでは、家族の悩み、不安などに対しても十分な話し合いや説明を しておりますので、気軽に相談してください。
Q:状態が悪くなれば入院しなければならないのでしょうか?
A:在宅ホスピスケアの最終目標は“在宅で医療を行うこと”ではなく、“患者様や家族のQOL(生活の質)を高めることです。当クリニックでは緩和ケアに精通した医師たちが24時間体制で患者様の訴えや症状に対応しますので、そのまま在宅で療養することは十分可能です。ただし、患者様自身が入院を希望されればその限りではありません。 もし、在宅で介護してみようというお気持ちがあれば、現在の主治医を通してでもかまいませんし、直接説明を聞いてみたいと思われれば、当院で相談をする時間を設けますのでお気軽にご連絡ください。
病院で死ぬことが当たり前になっている
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医療機関で死亡する割合が年々増加し、1977年(昭和52年)には自宅で死亡する割合を上回った。近年では8割を超える水準である。 |
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平成17年度人口動態統計 |
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在宅での看取りについて
■ 岩手県では在宅死の割合は13.9%
■ 全国では14.9%
■ 日本でのがん患者の在宅死の場合は特に少なく3-5%程度
■ 外国でのがん患者の在宅死率はUSA 20-35%、イタリア 48%、イギリス 27-33%、スペイン 45%、アイルランド 44%
もりおか往診クリニック 在宅での看取りの実績
(平成14年10月~平成20年4月26日)
■在宅での看取りは330例
・がん 187例(77%)
・非がん 77例(23%)
■がん終末期の方の看取りは
253/382例(66%)
日本の平均は3-5%
ガン終末期の患者さんたちはどれくらい家で過ごせたか
もりおか往診クリニックでの症例数262名 H19年2月
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